【第436場 BARラウンジCamel】
(12月中旬 深夜)
カラーン
マスター:「いらっしゃい。」
やくざえもん:「よぉ、大輔じゃねぇか。」
大輔:「赤左衛門さん。」
やくざえもん:「どうした?珍しいな。」
大輔:「あの…仁は来てないですか?」
やくざえもん:「仁は今日はいねーよ。
と言うよりしばらく来てねぇな。」
大輔:「ホストの12月ってそんなに忙しいんでしょうか?」
やくざえもん:「んぁ?
ま、立ち話もなんだし、座れよ。」
マスター:「はいよ。」
コン
大輔:「マッカラン…。」
やくざえもん:「あぁ、恒例になってるな。」
大輔:「懐かしいな。
確か、赤左衛門さんに結婚報告したのもここで、マッカランで乾杯して…うっ。」
やくざえもん:「どした?」
大輔:「いや、軽い頭痛で。」
やくざえもん:「そぅか。酒はやめとくか?」
大輔:「いえ、すぐ収まるから。」
やくざえもん:「んで?」
大輔:「え?」
やくざえもん:「ホストは12月忙しいかって?」
大輔:「そうなんです!
昔はホストの取材してたけど、まだその辺の記憶は曖昧で、12月のホストがそんなに忙しいのかって。」
やくざえもん:「仁に構って貰えてねぇか?」
大輔:「そうですね。
半月前に1度会ったきりで、連絡も既読スルーだったり素っ気なかったり。
仕事が忙しいなら仕方ないかな、とも思うけど。」
やくざえもん:「ま、12月は稼ぎ時なのは間違いねぇな。
昼職の客はボーナスが出る時期だし、夜職の客はボーナス貰った客が落とした金の回収で稼ぎ時だからな。
クリスマスを口実に稼げる時期だな。」
大輔:「そうですよね…。」
やくざえもん:「納得行ってねぇって顔だな。」
大輔:「約束…してくれたんです。
仕事前や仕事終わりの短時間でも会おうって。」
やくざえもん:「まぁ、クリスマスだけじゃなく、カウントダウンやら、バレンタインにホワイトデーとしばらくは忙しいだろうよ。」
大輔:「理解しなきゃいけないですよね…。」
やくざえもん:「何をそんなに焦ってる?」
大輔:「焦ってる?」
やくざえもん:「お前と仁は、たかだか数ヶ月で破局する仲じゃねぇだろ。
なのになんでそんなに焦ってる?」
大輔:「もう少し…あと少しで全部思い出せそうなんです。仁との過去が。」
やくざえもん:「倒れたんだろ?それで。」
大輔:「どうして…。仁から聞いたんですか?」
やくざえもん:「まぁな。
ぶっ倒れてでも思い出したいのか?」
大輔:「肉体的に辛くても、仁との時間を大切にしたいんです!」
ゴクゴクッ
カラン
大輔:「苦い…。マッカランってこんな味でしたっけ?」
やくざえもん:「それでいいんじゃねぇの?」
大輔:「どういう意味ですか?」
やくざえもん:「そんなに過去が必要か?
思い出せないことがあったら前に進めないのかよ。」
大輔:「…。」
やくざえもん:「オヤジ!チェックだ。」
大輔:「あの…。」
やくざえもん:「ほら、お前も行くぞ。」
大輔:「どこに?」
やくざえもん:「着いてこりゃわかる。」