第429場 BARラウンジCamel | 小説「果実な僕ら」

小説「果実な僕ら」

駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

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あかざえもん @akazaemon_hoshi

【第429場 BARラウンジCamel】


(11月25日 深夜)

(やくざえもんと仁が飲んでいる)


やくざえもん:「なるほどな。

それで?お前はどうするつもりなんだ?」


仁:「俺は…物理的に距離置こうと思ってる。

精神的に付かず離れずって言っても、俺と一緒にいたら、嫌でも過去に触れることになる。」


やくざえもん:「じゃあ、大輔の気持ちは?

大輔の気持ちを考えたことはあるのか?」


仁:「もちろん考えたさ。

でも大輔の性格的に、自分の肉体的に負担がかかっても、一緒にいたいって言ってくれるだろう。」


やくざえもん:「なら、大輔の気持ちを尊重してやるべきじゃねぇのか?」


仁:「大輔はそうでも、目の前で好きなやつが辛い思いをしてるのを見てることは、俺には我慢できない。」


やくざえもん:「自分だったらどうなんだ?

自分が大輔だったらどうしたい。」


仁:「俺だったら、肉体的に辛くても一緒にいたいさ。」


やくざえもん:「両方同じ気持ちなら、一緒にいるべきじゃねぇのか?」


仁:「言ったろ?

大輔が辛い思いをしてるのを見てることは、俺が許せないんだ。」


やくざえもん:「ふぅん。

ま、やってみるのもいいんじゃねぇの?

どっちにしろ動かなきゃ何も変わらないんだし、大輔ち気持ち聞いてみるか、言わずに距離

を置くか、決めるのはお前だ。」


仁:「ああ。もう少し考えて…と言ってもあまり時間はかけられないから、動いてみるよ。」



(翌日 都内のカフェ)


大輔:「え?」


仁:「だから、しばらく会えない。」


大輔:「どうして?俺なんかした?」


仁:「そうじゃねーよ。

この前も言ったけど、店のNo.1奪還するために少しばかり無理が必要でな。時間が取られると思う。」


大輔:「なら、今月終わったら会えるんじゃ?」


仁:「無理させた客にはアフターフォロー入れなきゃいけねーし、No.1を取ったやつはそれも見越してさらに追従をかけられるくらいのやつだ。だから来月も気が抜けねぇ。

クリスマスやカウンドダウンイベントもあるかもしれねぇし、バレンタインにホワイトデーと、冬は目白押しなんだ。」


大輔:「そっか。

せっかく思い出しかけてたから、もっと思い出したいと思ってたけど、仁の仕事が忙しいなら、邪魔にならないようにする。

でも仕事前や仕事終わりの1時間でもいいから、たまには会いたい。」


仁:「そうだな。考えとく。」


大輔:「…やっぱり俺が倒れたことで俺が重くなったとかあるのか?」


仁:「ばーか。俺がお前を重荷に思うわけねーだろ。お前は第一優先だが、九十九には世話になってるし、店が1周年を迎えるまでは皆の結束を固めたい。

なにせ俺は一応『相談役』って特別な役職を貰ってるからな。

お前ならわかってくれると思ったんだ。」


大輔:「わかった。仁が俺のことを買い被ってくれてるということにして、理解しとく。

仕事頑張ってな!」


仁:「おう!未来の結婚資金貯めてくるぜ!」


大輔:「け、結婚資金て!」


仁:「俺はそれくらいお前のことを思ってるってことだ。」


大輔:「ありがとう。」



(仁が1人になって店に向かう途中)


仁:「あれだけ言えば大丈夫か?

だが時間稼ぎにしかならんよな。

このままフェードアウトすればいいのか?

それは期待を持たせたまま、大輔を傷つけることにならないか?

くそっ。

どうしたらいーんだよ!」



(嘘に嘘を重ね、それだけでも心にチクチクとした痛みを感じた仁は、今後の展望に期待が持てず、苛立ちを隠せずにいた。)