第428場 病院 | 小説「果実な僕ら」

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駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

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あかざえもん @akazaemon_hoshi

【第428場 病院】


(11月19日 大輔が救急車で運ばれた夜)


仁:「先生!」


医者:「御家族の方かな?」


仁:「いえ…。」


医者:「ご友人かな。御家族は?」


仁:「連絡入れたので、もうすぐ来られると思います。

あの!大輔は!」


医者:「詳しく調べてみないと分かりませんが、今はただ眠っているだけの状態だと思われます。

倒れられた時のことを詳しく教えていただけますか?」


仁:「はい。

少し前から時々頭痛がするようになったって言ってました。

今日も2回くらいあって。

それで、アルバムを見ていたら急に意識を失いました。」


医者:「過去にご病気かお怪我は?」


仁:「4年前交通事故にあって、体の怪我は大したことなかったんですが、部分的に記憶を無くしていました。」


医者:「なるほど。

なら、その当時の先生がまだ同じ病院にいられたら、その先生に見てもらう方がいいでしょう。

恐らくMRIなどの精密検査や、記憶などに関する専門的な検査になるでしょう。」


仁:「分かりました。当時の病院にすぐ連絡します。」


医者:「病院が分かれば、こちらから連絡を取り、紹介状を書きます。」


仁:「よろしくお願いします。」


医者:「今はあなたも動揺されていると思いますが、本人に動揺があまり伝わらないようにする方がいいと思います。

今夜はここに入院してもらいますから、また明日来てください。」



(翌日)


コンコン


仁:「大輔!」


大輔:「仁、そんなに大きな声を出したら他の患者さんに迷惑だよ。」


仁:「悪い…。」


大輔:「いや、俺こそごめん。心配かけたな。」


仁:「心配はしたさ!もう大丈夫なのか?」


大輔:「今はほとんど頭痛もしなくて、体は元気だよ。どうしたんだろう。」


仁:「ほとんどってことは、少し痛むんだな。

転院の話は聞いたか?」


大輔:「うん、幸い当時の主治医の先生もまだいるみたいだから、そこで見てもらう。」


仁:「検査の結果、俺も聞きに行っていいか?」


大輔:「もちろん。きっと、なんともないって、笑い事で終わるよ。」


仁:「ああ、そうだな。」



(数日後 大輔が昔入院していた病院)

(主治医と仁が2人で話している)


医者:「脳の精密検査には異常がないので、本人の話を聞く限り、記憶と関係があると思います。」


仁:「やっぱり…。」


医者:「無理に思い出そうとして、記憶に触れる度に負荷がかかっていたんでしょう。

車の写真で、事故のことが引き金になって思い出されたのだと思います。」


仁:「それで、これからどうしたらいいんですか?」


医者:「できるだけ思い出させようとしないことですね。あなたは事故の関係者でもありますし、少し距離を空けてみるのもいいかも知れません。」


仁:「距離…。」


医者:「物理的に距離を置いたり、精神的に負荷がかからないよう過去には触れず、付かず離れずの距離感といいますか…。

今はまた倒れたりしないように、負担を軽くしてあげることです。」


仁:「はい…。」


医者:「お辛いかも知れませんが、なにが患者さん本人に取って最適か考えて見てください。」




(仁の家)


仁:「距離…か…。

やっと大輔を取り戻したのに、また離れるのか…。

大輔にとって最善の方法か…。」



(奇跡に近い大輔の回復に暗雲の兆しが見え始め、仁にとっては過酷な決断を迫られることとなった。)