第418場 旅行当日 | 小説「果実な僕ら」

小説「果実な僕ら」

駆け出し脚本家の、初めての携帯小説です。
BLで始まりますが、内容は様々なヒューマンストーリー。
脚本形式なので、ご了承ください。

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あかざえもん @akazaemon_hoshi

【第418場 旅行当日】


(11月12日 午前)

(青藍が隆平の家に車で迎えに来たところ)


隆平:「ほんとに来てくれたんだ。」


青藍:「はい。約束しましたし。

これから葵さん迎えに行こうと思うんですけど、芸能リポーターとか大丈夫そうですね。」


隆平:「うん、あの発砲騒ぎ以来、全く寄り付かなくなったよ。御大って方によくお礼しないとだね。」


青藍:「逮捕される必要があった人とは言ってましたけど、逮捕者も出ましたからね。」


隆平:「こうやって旅行に行けるのもそのおかげだから、足向けて寝られないよ。」


青藍:「俺も旅行楽しみにしてたんで、行けて嬉しいです。」


隆平:「運転中話しかけてるけど平気?」


青藍:「こう見えて意外に運転するんですよ。

リッツ連れて公園とか、買い出しとか。」


隆平:「そうなんだ。なら安心だね。」


青藍:「聞いてみたかったことがあるんですけど、いいですか?」


隆平:「うん、なんでも聞いて。」


青藍:「隆平さんはどうして俳優になろうと思ったんですか?スカウトですか?」


隆平:「スカウトもされたことあるけど、その前に自分で養成所の試験受けまくったよ。」


青藍:「そうなんですか?!」


隆平:「うん、中学に上がる頃かな?

小さいとこから大手まで受けまくった。」


青藍:「ちょっと意外です。」


隆平:「きっかけは些細なことで、小学生の時目立たなかった子だった俺が、学芸会で主役に抜擢されて。

自分に注目が集まるっていいなって思ったんだ。」


青藍:「なら、モデルとかタレントでも良かったんじゃないですか?」


隆平:「子供心に、普通のモデルやタレントじゃ使い捨てになるって感じてたんだ。

だから一から演技を叩き込んでくれる養成所を探して。受かった中で、レッスンが1番厳しいとこを選んで入ったんだよ。」


青藍:「だから隆平さんの演技は本格的なんですね。」


隆平:「ありがとう、そう言って貰えると救われる。最近は名前が先行して、演技を見てくれる人が少なくなったから。」


青藍:「いや、演技あってこそですよ。

さっき話した御大も、隆平さんが好きな俳優だから動いてくれたってのもあるみたいです。」


隆平:「ほんとに?!なら、頑張ってきた甲斐があったかな?」


青藍:「でもそれだけ厳しい養成所で、逃げ出したくなったことはないんですか?」


隆平:「ないって言ったら嘘かな。

タレントとしてスカウト受けた時とか。

でも実力勝負で負けたくなかったんだ。

負けん気だけは強くてさ。」


青藍:「隆平さんのこと知れて良かったです。」


隆平:「俺も知ってもらえて良かったよ。」


青藍:「あ、葵さんの家に着きますね。

葵さん、下で待っててくれてます。」


ウィーン


隆平:「葵くーん!」


葵:「こんにちは。

なんか2人でいいこと話してたの?

充足した顔してるけど。」


隆平:「ボクの過去の話をしただけだよ。」


葵:「俺も聞いてみたかったです。」


隆平:「これ以上は照れくさいから、今度は2人の話を聞かせてよ。」



(隆平の予想外の過去に青藍は感動し、素直に惹かれるものがあった。その後の車中では賑やかに話が弾み、目的地までの距離はあっという間だった。)