ワーキングホリデー 坂木司
あらすじはこちら↓
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。「BOOK」データベースより
坂木作品を連チャンで読んで、これが3作目。
前2作を読んだ時も感じたが、やはりスラスラと読める。
難解な表現もなくとても読みやすい。
そしてウマそうな食事描写も変わらず、これもまた楽める。
ミステリだと思って読んでみたら、実は親子を中心としたハートウォーミングなストーリー。
しっかりものの小学生の進君と元ヤンでホストの父親のヤマトというアンバランスな二人のキャラが良い。
（しかし沖田大和+進という名前の組み合わせは、完全に狙ってますねｗ）
家事全般をなんでもこなす小学生離れした進君の学校でのアダ名が「お母さん」というのが笑った。
短気で口も悪いが性根は真面目で心優しいヤマトの、悪態をつきながらも手を抜かない仕事ぶりや、
どんな人間にも分け隔てない優しい行動に好感がもてる。
初対面の二人がだんだんと心を通わせ、本当の親子になっていくプロセスがグッと来る。
徐々に父親としての自覚が生まれてくるヤマトが進君を叱るシーンなんかは、素直にいいね！と思った。
この二人だけでなく登場人物みんなが愛すべきキャラ。
なかでもオカマのジャスミンが最高！
性別はともかくこんな風に部下の事を一人ひとり考えられる人間になりたい。
自分も見習おう。
冒頭のホストクラブの情景も面白いし、舞台となる宅配便のよもや話も興味深い。
特に自分は職業柄、宅配便には毎日お世話になっているので余計に入り込めた。
改めて大変な仕事だな～と実感。
物語に登場するハチさん便の面々の描写に、毎日うちに集荷に来るドライバーの姿を重ねて、
長年お世話になっているのにうちはジュースの1本も上げたことがないなー、
とちょっと恥ずかしく思ってしまった。
最後はあれだけしっかりものの大人びた進君の子どもらしい一面が見られて安心した。
そしてその進くんに父親らしい対応をするヤマトの人間的成長も胸が熱くなる。
「ワーキングホリデー」というタイトル通りの期間限定というのが切ないが、
進君にとってもヤマトにとっても海外留学にも劣らぬ素晴らしい経験と親子関係を築けて良かったな～と心から思える。
この後、時間をかけて最終的には親子３人で暮らせるようになってくれたら最高だろうな、
と読者が登場人物たちの幸せな未来を願えるような余韻を残した爽やかな読後感。
とても優しい気持ちになれた。
しかしクロネコが本当にリヤカーで配達をしているとは知らなかった。
興味があってググったら出てきたｗ
環境にもやさしいし、昨今の駐車事情も考慮された素晴らしい案。すごいなークロネコ！
そして何の気なしに坂木作品を読み漁っていたが、
この「ワーキングホリデー」、続編が先月でているじゃないか！！
なんとタイムリー。
これは続けて読むしかない！というか早く読みたい！！
よし次はこれを読むぞ。
ウィンター・ホリデー 坂木司