ノーマジーン | 家具 通販 赤や 竹田のブログ

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初野晴さんの「ノーマジーン」を読みました。


ノーマジーン 初野晴

ハルチカシリーズ以外の初野晴さんの小説を読むのは初めて。
あのコミカルな学園推理小説しか知らないので、
幻想的でお伽噺のようなこの物語はとても新鮮。

終末思想か蔓延する近未来が舞台。
異常気象、悪化する治安、不安定に荒れていく世界で、
下半身に障害を持ち車椅子で生活する革職人の主人公のシズカ。
そこにある日突然押しかける人語を話す赤毛の猿のノーマジーン。
一人と一匹の共同生活が始まる。
一日一杯のミルクをわけあい、収穫を待ちわびながらリンゴの木を育て、
映画を観る約束をする。そんな生活。

無邪気で純粋、まったく汚れのない存在であるノーマジーンに、
心に闇を抱え、孤独に生きてきたシズカがだんだんと心を開いていく。
二人(?)の愛のあるやり取りが心温まるが、
それと対比して世の中はどんどん荒廃していく。
絶望しかない未来に向う不安感ばかり煽られる。

人間で言うと7歳程度の知能を持ち合わせていないという設定のノーマジーンの
やることなすことが微笑ましい(あまりに馬鹿すぎてイラッとくることもあるが)。
この不安定な世界で過ごす二人の生活のエピソードのひとつひとつが切なくも優しい。

そして物語終盤、二人の生活に突如現れる賊徒の登場によりストーリーが急変。
無邪気で純粋な存在であるノーマジーンに背負わされていた業が判明する。
自身のアイデンティティを保つ事ができないような事実に、最終的にシズカはどうするか?
終わっていく世界の中、人が本当に大切にすべき事はなんなのか?を問われた気がして
ガツンと殴られた気分。
切なくも本当に綺麗な物語だった。

死刑制度の是非を問いたり、実際にあった事件とそっくりな出来事を持ちだしたり、
なかなか重いテーマも盛り込まれていたが、
最後は心の底から優しい気持ちになれた。

ノーマジーンとはマリリン・モンローの本名であるというのは知ってましたが、
(実際に作中で二人でマリリン・モンローの映画を観たりもする)
自分は世代的にも真っ先にBARBEE BOYSの曲「ノーマジーン」が頭に浮かびました。
「なぜなんだ?ノーマジーン」で始まるあの曲です。
すごく好きな曲だったので歌詞まで覚えていたのですが、
意外とこの物語とバッチリ合う歌なんじゃないかと思えてきました。


BARBEE BOYS ノーマジーン