千葉支部より、
今回は、メーカー不明の 「伊号潜水艦」を作ってみました。
画像を見ていただければお分かりのように非常に簡単なキットです。
しかし、よく見ていると何となく違和感を感じます。まず、箱絵です。このキットの
値段が分かりませんが、箱入り、然もなかなかしっかりした伊号潜水艦が描かれています。
もう一つ、船体当木材の質が良いこと。潜水艦は値段の安いものが多いので木材の材質も
あまり良くありません。それに比べてとても良い材質で、掘り抜きになっています。
防水性が高くなりますが、それだけ手間がかかります。安いキットではやりません。
それだけ良いキットなのにゴム動力?
どうも腑に落ちません。とりあえず作りながら調査を進めてみましょう。
工作は当時の小学生でも簡単に出来てしまうほどあっさりしています。ゴム動力にすると
甲板を取り外しにしなければなりませんので、そうせずにモーター用の(中)スクリュー
を取り付けました。甲板は接着しました。
あっという間に完成です。出来上がってみるとなかなかバランスよくまとまった仕上がり
です。素人の町工場の仕事には見えません。
作りながら、どうもどこかで見た様な気がする。箱絵も見た様な。
調べてみると、有りました、然もいくつも。
まず、三和の伊号155です。箱絵も似ています。それから田宮模型のミリオン伊号400。
他にも、三和の伊号206や箱絵は違いますが中の船体は全く同じなタバードなど似て
いるものが次々と出てきました。
三和からは似たような潜水艦がいくつか発売になっています。いずれも同じ船体を使用して
伊号155のようにモーターと特殊ギヤーによって自動潜航、浮上を繰り返すもの、伊号
206やタバード、サーゴのようにモーターで水上を走るものがあります。
しかし、スイッチが甲板についているのでグリスを塗ったとしても防水には問題があったで
しょう。
伊号155の発売時期ははっきりしませんが、昭和33年頃でしょうか。
田宮模型のミリオン伊号400、ミリオンハリバットは昭和34年3月発売で、全長は37㎝、
販売価格は130円でした。いずれも潜航はせず水上走行のみでした。
三和のノーチラス号には特殊ギヤーが添付され、艦首もそれらしく成形されています。
こちらはメーカー不明のノーチラス号です。箱入りで、箱絵も立派ですが中身は普通の
ゴム動力の潜水ボートです。
また、静教からも原子力潜水艦スケート号が発売されました。ノーチラス号は北極点を
潜航しましたが、スケート号は北極点に浮上しました。このことがニュースで取り上げ
られ有名になったのでノーチラスに対抗して発売したのでしょう。やはり自動潜航浮上
装置付き、全長43㎝のモーター動力の大型モデルでした。
ちなみに、三和が発売したサーゴはスケートの同型艦でした。三和のサーゴはキットの
実物を確認していませんが、どの様な形だったのでしょうか。
今回の調査で、メーカー不明の伊号潜水艦は三和の伊号155と同じものではないかと
思われます。
これは推測に過ぎませんが、三和の伊号155などはモーター使用のため高価になって
しまい子供でも買えるゴム動力の安価なものを考えたが、三和で出すと他の売り上げに
影響が出ると考えてあえてメーカー名を隠して発売した。というのはいかがでしょうか。
船を作りながらこんなことを考えているときが一番楽しいです。
そんなことをしているとボケるぞ、と言われそうですが。
(画像の一部はヤフオクのものを使用しました)