倒れた患者さん。
心臓はもう動いていなかった。
聴診器で聴いても、心音も呼吸音も、しない。
頸動脈も、大腿動脈も触知しない。
スタッフを集め、蘇生行為(CPR)を開始する。
気道確保のうえ、懸命に心臓マッサージをする。
『まだ、僕にひとことも別れの言葉も言わないで、
あの世に行くなんて、だめじゃないですか…
まだ、まだ、頑張ります、って言ってたじゃないですか!』
チアノーゼがでている…、祈るような時間。
戻ってきた!
心拍再開。
自発呼吸が戻ってきた。
病名の診断はすぐにつけた。
治療を開始し、救命できた。
またこの世界に帰ってきてくれたあなた、ありがとう。
僕を置いていくなんて、もうそんなこと、しないでくださいよ。
まだまだ僕らの関係は続くんですからね。
患者さんを緊急で運んだり、心臓マッサージするなかで気づかないうちに腰を痛めてしまった。
見ていた優しい僕の患者さんが、先生、貼ってあげますよ、と小さなピップエレキバンを腰から背中にかけて何ヶ所も貼ってくれました。
これって効くんですか?と尋ねると、
『はい、すごくよく効きますよー』と自信満々の笑顔。
僕は、貼ってもらったら、すぐに効いた気持ちがしました。
そう、あなたのあったかい気持ちがどんな薬より、効くんですよ!
そう、ハートですよ。
僕たちの絆があれば、僕らは、いったん止まった心臓だって、また動かせるんだ。
医療法人信証会 江田クリニック 院長 江田証