今回、複数の学会にかけもちで参加してきた。
地方都市で開催された学会総会もあり、移動も宿泊も非常に大変だったが、患者さんのためである。
その中で、医師でも犯しがちな誤解をなんども見た。
SIBOの研究発表で、『SIBOを起こしている腸内細菌を検討した』という内容なのに、なんと調べた対象が「便」なのだ。
千人単位の大規模な検討にて、大腸内の腸内細菌叢と小腸内の腸内細菌叢はまったく違うものであることが示されている。
便の中に検出される腸内細菌は、大腸内、それも肛門に近い部位の大腸内の腸内細菌叢を反映したもので、小腸の中の腸内細菌叢は、また全く異なることがわかっている。
この発表には、さすがの座長(国立大学教授)からも、
『これは、便ですよね?
小腸からはかなり遠いですよね…』と苦言を呈されていた。
ほかの研究会でも、
「便を取って調べる検査でSIBOの治療で使う抗生物質を決める」などというとんでもない演者の話を聞いた。
SIBOで増えている細菌は、あくまでも小腸内で増えている。
この小腸内の細菌に対して効く抗生物質を使わなくてはならない。
しかし、便で調べても、それはわからないのだ。
いくら分子生物学的なアプローチで便中に排出された細菌を分析したところで、便でわかる細菌は、あくまでも大腸内で増えている細菌であり、見当違いである。
つまり、SIBOで増えている細菌は、便を採取して調べる検査ではわからない。
患者さんもここはよく勉強して理解しておく必要がある。
ここは下記の本で解説。