医学部の医局にいるとき、アメリカから留学してきたアメリカ人の医師に、
「スライドを土曜日までに作っておいて」と頼みました。
「I wii try.(トライします)」
と返事がありました。
土曜日に大学に行ってみると、まだ終わっていません。
「やるっていっていたよね?」と言うと、
「いや、tryしたんです」との返事です。
英語でトライ(try)とは、「できたらやってみます、できるだけ」という軽い意味なのです。
病気が一進一退でなかなか改善しない人は、トライしようとしています。
病気がよくなる人は、ドウ(do(実際にやりとげる))します。
病気がよくなるためには、思い切った行動が必要です。
私は医学部の医学生のとき、道場で空手を習っていました。
拳立て(握りこぶしで腕立て伏せをすること)や、木にわらを巻いて拳が血だらけになるまで木を殴ったりしていました。あとで、医学部の先輩に、「江田、将来、手術などの緻密な手技ができなくなるから、そんなことはやめろ」と言われてやめましたが、確かに今、大腸のポリープを大腸内視鏡で切除するような、本当にデリケートな手技が必要な医師になってみて、あの時やめてよかったと思います。
ただ、わかったこともあります。
そのとき、教えられたのは、瓦(かわら)を拳で割るとき、おそるおそる拳を瓦に当てると、痛いだけで瓦は割れてくれません。
思い切って拳を振り下ろすと、瓦は割れて、拳も痛くないのです。
人生には思い切る瞬間が必要です。
覚悟する時があります。
「決断」とは、「決」めて、ほかの逃げ道を「断」つことです。
「トライ(try)」ではなく、「ドウ(do)」しよう。
健康のために、「絶対によくなるんだ」と決断し、思い切った行動をしよう。
医療法人社団信証会 江田クリニック 院長 江田証
http://www.edaclinic.com/