歳をとって、孫にうとまれたり、相手にされなくなる人がいます。
歳をとって、孫がますます寄ってきて、「すごいね!」と尊敬される人がいます。
孫に尊敬される人。
それは、常に勉強している人です。
その後ろ姿は美しいものです。
孫に尊敬されない人は、「もうどうせ歳だし、おむかえも近いんだから、いまさら勉強してもしょうがないだろう」
と言います。
孫に尊敬される人は、「死ぬまで人間として向上したい、それが人間が人間らしくあるべき姿だから」
と言います。
本を読んだり、習い事をしたり、興味のある講演会に足を運んだり、尊敬する人に相談に行ったり、やむことなく自分を磨こうとしているのです。そういった背中は、孫から見ても、尊敬に値するはずです。
そういう心意気があれば、自堕落な生活にはならず、心に常に張りもでてきます。
もう勉強なんかいらない、と思えば、人生はもう砂漠と同じです。
何歳になっても、青年のように学ぼうという気持ちが、孫をひきつけるのです。
高齢になってくると、認知症の心配がでてきます。
認知症の研究の中でも、私たちに大切なことを教えてくれているのが、「ナン・スタディ」といわれる「修道女研究」です。
ふつうの家庭に生きている人は、結構、生活が乱れています。
暴飲暴食をしたり、お酒を飲んだりと不均一な食生活です。
ところが、修道院に住み込んで生活しているシスターたちは均一な食事と規則正しい生活をしています。
決まった時間に起き、決まった時間に食事をして、寝ます。
そして、日記をつけていることから、事細かに研究データがとりやすいのです。
修道女たちの承諾を得たうえで、シスターが亡くなった後、全員の脳の解剖が行われ、脳の状態と生前の生活について比較研究されました。
分析には若い頃からつけていた日記や読書などの記録が用いられました。
これによると、生きているときに書いていた文章が、意味の詰まった(「意味密度が高い」という) 文章だったり、文章に複雑な構文を使っていたり、語彙が豊富だったシスターは、脳を解剖してみると、たとえ脳がひどく萎縮していて、通常は認知症の症状が出ていてもおかしくないような状態だったとしても、 実際には認知症の症状が出ていなかった人が多かったのです。
このようなシスターの生前の記録を見ると、若いときから読書をよくしていたことがわかりました。
つまり、「読書をしていると、たとえ脳が萎縮していても、認知症の症状がでない」ということです。
読書は認知症に対する抵抗力をつくるのです。
また、ふだんから文章をよく書き、加えて、外国語を勉強していた人は認知症に対する「抵抗力がつく」ということも判明しています。
彼女たちは〝認知症から逃げきれた人たち"といわれています。
認知症から逃げきりたいと思うなら、日記をつけたり、ブログでもよいので毎日書く習慣をつけましょう。
できるなら外国語も1つぐらいはマスターしたいところです。
ほかに、私がおすすめしたいのはラジオの野球中継です。
テレビには映像がありますから、脳を働かせなくてもボーッと眺めているだけで試合の状況はわかります。
しかし、ラジオ中継は違います。耳で聞いた言葉を脳を働かせて視覚的なイメージに置き換えなければ試合の状況はわかりません。
野球中継のアナウンサーは、誰々が打った球がセンターに飛んでヒットになった……といったことを上手に話してくれますから、それを聴いて脳は想像し、脳の中で映像を再構成するわけです。これが脳の活性化になるのです。
野球に興味がなかったら、サッカーでもいいでしょう。
ラジオを聴く習慣がない人も、ときにはテレビの画面から離れてラジオに耳を傾けてはいかがでしょうか。
以上のことから、「常に学ぼう」「勉強しよう」「死ぬまで人格向上のために努力しよう」という気持ちが、脳を若々しく保ち、実際に、読書や外国語の勉強などが、脳の老化を防ぐということがおわかりになったと思います。
孫に憧れられる人になろう。
僕もがんばります。
医療法人社団信証会 江田クリニック 院長 江田証