断つ。
「断つ」ということはすばらしいことだ。
今の世の中、「つながる」ことに一生懸命。
フェイスブック、ツイッターなどのSNS、ラインやメールで四六時中他人とつながっていようとする。
でも大人になれば、そんな子どもじみた戯れに命をかけるのは止めた方がいい。
決断。
それは、「決めて、断つ」と書く。
もう他の選択肢はない、と心に決めて、他の道を断ち切る、という不退転の覚悟を指す。
他人とつながらなければ、人間ならばだれもが感じるだろう、寂しさ、悲しさ。
それも重要な人生のスパイスなのだ。
寂しいから、不安だからといって、安易にそれから逃げてはいけない。
別れ、それすらもすばらしい。
僕は大学院のとき、愛している先生がいた。
すばらしい人格と尊敬すべき知識と学問に対する姿勢をもった先生だった。
僕はずっと死ぬまで弟子としてこの先生のもとで研究や臨床をしたいと思った。
しかし、僕は故郷に帰ってやらなくてはならないことがあった。
故郷に開業すること。
幼い頃から僕を抱いてあやしてくれた年寄りたちが、死に始めていた。
もう時間的な猶予はなかった。
だれにでも、本当に自分がすべきことをしなくてはならないとき、愛している人とさえ別れなくてはならない「人生の時」がある。
だれもが、「人生が二度あれば」と願う。
しかし、人は両方の道は歩めないのだ。
今から思えば、あの別れがあったから、たくさんの故郷の人命を救うことができた。
出会いはすばらしいが、別れることもまたすばらしいのだ。
今日も神奈川、東京、埼玉、群馬、茨城、栃木県全域から患者さんが多い。
今日も僕は自分の信じた道を進む。