昨年の夏に買ったサンバイザーのゴムバンドがダメになった。伸びきった状態になってしまい、強い風が吹くと脱げて飛んでしまいそうで、快適に使用できなくなった。昭和20年代には、ズボンやパンツなど着るもののゴムの寿命がくると、新しいゴム紐と取り換えることができたが、最近はほとんどの物が交換ができにくくなっている。
身近にあるもので、ゴムのように伸び縮みするものは見当たらない。ゴムはその伸び縮みする特性を生かして、輪ゴム・風船・ホース・ベルト・靴・防水布・玩具をはじめ、スポーツ用品・自動車のタイヤ・振動を吸収する材料・電気絶縁物など、生活用品や産業材料としていろいろなところで利用されているが、ゴムはなぜ伸び縮みできるのか改めて聞かれると、自分も含めて返答に困る人は多いのではなかろうか。子供の頃、不思議に思ったことの一つを解決するためにも調べてみることにした。
先ず、輪ゴムの作り方を調べた。東南アジアなどに生育するゴムの木から採れるラテックスという樹液が輪ゴムの原料である。ゴムの木の表皮を螺旋状に削り取り、木に取りつけた容器に採取した樹液はゴム分の濃度が約20%である。このラテックスを煮詰めたり、遠心分離機で水分を除去してブロックのようにしたものを日本に運ぶのである。そして、日本の製造工場において、このラテックスに充填剤(製品の耐久性強化や増量のために加える物質。ゴムの強化にはカーボンブラックを用いる)などを配合しながら練るのである。その後、不純物を取り除いてから、硫黄などを加えて、再び練って、押し出し機から筒状に押し出す。それを約200℃に加熱してから冷却して輪切りにすると輪ゴムができるのである。
この工程のどこでゴムの弾力性が作られるかであるが、実は製造過程で配合した硫黄がポイントなのである。ラテックスは天然の高分子材料であり、その分子はひも状に長く繋がった分子鎖といわれるものであり、分子鎖同士は互いに絡み合っていて、それぞれは自由に動ける余地を持っている。これがゴムの伸縮性のもとであるが、これだけでは輪ゴムのように伸び縮みはしない。
ゴムの木から採ったラテックスを乾燥した生ゴムは引っ張ると少し伸びるが、その後縮むことは無く、さらに引っ張ると切れてしまうのだ。しかし、硫黄を添加し、加熱すると、硫黄とゴムの分子が結びついて、ゴムの分子同士が硫黄の仲立ちによって固定されて離れなくなるから、ゴムを引っ張ると元に戻ろうとする、これがゴムの伸び縮みする理由である。
天然ゴムは、樹木からラテックスを採取するのであるから、その採取量には限界がある。そこで、天然ゴムの不足を補うために合成ゴムの研究がなされた。1884年にイギリスの科学者ティルデンがテレビン油(針葉樹、殊に種々の松の材を水蒸気蒸留して得られる揮発性の精油)の熱分解によるイソプレン(天然ゴムの熱分解でできる無色透明の液体。工業的には石油ナフサの分解物から抽出でき合成ゴムの重要原料)の合成に成功した。そして、そのイソプレンから弾力性のあるゴムのような物質を作ることに成功し、合成ゴムが実用化された。現在は、イソプレンゴムやブタジエンゴムなどが多くの分野でその特徴を活かして用いられている。それにしても伸び縮みするするとは不思議である。参考文献 暮らしの中の面白化学(著 花形康正)、広辞苑