ドラマや映画になったミステリー小説 まとめ
今回はWOWOWの2作品について書いてみました。翳りゆく夏≪第49回江戸川乱歩賞受賞作≫
20年前の誘拐事件の犯人の娘が、とある大手新聞社の記者に内定した。
それを嗅ぎつけた週刊誌のスクープ記事を切欠に、
その大手新聞社の社長の方針で、20年前の新生児誘拐事件の再調査を行う事となる。
社長命令を受けた窓際社員の梶は、犯人の周辺、被害者、当時の担当刑事や病院関係者への取材を重ね、
ついに“封印されていた事件の真相”に辿り着くのであった。
ドラマ『翳りゆく夏』公式
【ドラマ 翳りゆく夏 感想】(原作本は読んでいません)
20年前の身代金要求の誘拐事件であるが、事件発生直後の犯人死亡のために、
誘拐された新生児の生死については何ひとつ捜査の進展はなく「おそらく殺されたのであろう」
という事になっていた。
もう、最初のこの「おそらく…」っていう緩い設定の時点で、ミステリーなんだから
視聴者の方としては「ああ、こりゃあ赤ちゃん生きてるって事なんだな」と、すぐ気付いてしまう。
だから、もうその後は、視聴者は赤ちゃんの生死の確認と行方が気懸りで、
展開されるストーリーを、主人公の梶(渡部篤郎 )と共に一途に辿ってゆく事となる。
しかし3話くらいで「ああ、この子が。…とすると、誘拐はこの人が。…」と薄々わかって来るのが、
4話後半には決定的にネタバラシされる前にネタバレしてしまうので、
最終回はその確認のためだけに視る事となる。
登場人物の年齢から考えても、ミステリーとしては非常にハードルの低いわかりやすいものとなっている。
ただ…この人、何のために配役されてたの?という人物が一人。
それは岩本多代さん演じるところの武藤家のお手伝いさんなのだけど…視聴者をミスリードするつもりであれば、
どうして、この人を誘拐された赤ちゃんの親世代ではなく祖母世代で登場させたのかが、最大の謎でもある。
硝子の葦
道東・釧路でラブホ『ホテルローヤル』を経営する幸田喜一郎が事故で意識不明の重体となった。
親子ほど年の離れた妻の節子は心に大きな闇を抱えていた。
夫が事故に遭う前から節子には愛人関係にある澤木(ホテルローヤルの顧問税理士)がおり、
夫の事故にも不審な点があった。
節子には、短歌を嗜む趣味があったが、
夫の事故後も、その歌会で知り合った母娘の家庭の秘密に触れる事となったり、
長らく夫の愛人だった母が失踪したり……と、節子の身の回りで
次々と事件が発生する。そして物語はやがて驚愕の結末へ。
『硝子の葦』公式
【ドラマ 硝子の葦 感想】(原作本は読んでいません)
これは、でも厳密に言えば、最初から犯人わかってながらストーリーが進行してゆくので、
ミステリーとは言えないんだろうけど、
「人間の深層心理深くどんどん潜って、言葉にならない節子の想いを知る」という意味では、
やはりミステリーなんかな?
この話に含まれる幾つかの要素を箇条書きにしてみると、
①児童虐待。
②親殺し。
③年の差婚。
④母性の欠如。
⑤境遇に負けず、たくましく生きる。
ざっと、こんなとこかな。
心情的には、例え犯罪者であっても、主人公の節子に同情こそすれ、
到底、批難する気にはなれない。
むしろ節子は
「母親に虐げられた子供でも、人に愛情を注ぐ事が出来る人間になれるんだ」という希望の光にさえ感じられる。