入院したばかりで
まだ病棟に慣れず
部屋にこもっていらした
認知症のあるA様に
A様は想いを発するのが苦手で
相手の発する言葉を理解するのも
得意ではありません
他の患者様方と 一緒に
食堂で食事を召し上がって
いただきたくて
下見にと A様を食堂まで
ご案内したところ
食堂でのんびりしていた
別の患者様が A様と私に
声をおかけになりました
以上が 前回までの内容です
声をかけてこられたのは
働いていらしたころ
職場で多くの部下を
まとめてきた という患者様
とても面倒見のよい方です
「こんにちは 初めての(方の)
ようですが よかったら・・・
今度でも構いません(ので)
紹介してもらえませんか?」
とても 配慮のある さすがのコメントですよね
この患者様 認知症の程度は重度なのですが
重度だからといって
なにもかもできないわけでは 全くないんです
その呼びかけに
A様が小さく頷かれたので
私がお二人のあいだに入り
ご挨拶をすませ
少し おしゃべりしてから
A様と またお部屋に戻りました
お部屋に戻る途中
A様からもれた
「疲れた」 の声
緊張しましたか? と尋ねると
苦笑いをされた A様に
「外国で
お仕事をされたときの方が
大変だったんじゃないですか」
「私は 英語でやりとりなんて
絶対無理ですよ」
と 私が返すと
A様は海外で起業された経験のある方です
A様は 誇らしそうに笑った後
悲しそうな表情になって
「日本人 」
と 呟かれたんです
この時
A様が発したかった言葉は
「だって相手は日本人なのに
会話するのが大変なんて」
のようでした
正確な細部までは わかりませんが
そういう意味かと伺うと A様は頷かれていました
この「日本人」という言葉を発することが
できることからも A様は
上手く想いを文章にして発することが
できなくなっているだけで
若いころのことも思い出せるし
比較もできる ということや
日付に混乱することがあっても
何もわからない人ではない
ということが はっきりわかります
A様
会話を追うのに疲れたでしょうし
同じ日本人だからこそ
伝わらない わからない時は
よけいに切ないんだろうな・・・
安易な声掛けに 反省
さてA様
この日の夕食は
お部屋で召し上がったものの
翌日からは
食堂で皆様と一緒に
お食事を召し上がられるように
なりました
本日も最後までお読みいただき
ありがとうございました