・写真は、国語世論調査(出所:文化庁)

http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h28_chosa_kekka.pdf

 

 「国づくり、地域づくりは、人づくりから」を信条とする参議院議員赤池まさあき(全国比例区)です。

 

6月14日(木)、午前8時からから1時間、自民党本部において、私が部会長を務める文部科学部会が開催されました。議題は国語施策についてです。高木啓衆議院議員からの「漢字と仮名の交ぜ書き」の問題提起を受けて、開催することにしました。文化庁国語課の担当者に出席してもらい、国語施策について出席国会議員と議論しました。

 

 漢字の制限は占領政策ではなく戦前からあり民主化が理由、漢字と仮名の交ぜ書きはしない、ただし「子ども」は交ぜ書きではない、外来語はできるだけ言い換える、敬語の重要性等、議論が活発に行われました。

 

 「国は、国語が文化芸術の基盤をなすことにかんがみ、国語について正しい理解を深めるために、国語教育の充実、国語に関する調査研究及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。」(H13文化芸術基本法)と規定されています。

 

 「ことばは思想感情を表現し、これを他人に伝達媒介する手段である。」「平明簡素で能率的であることが要求される」と同時に「社会的伝統的歴史的なものである。」国語の改善は、過去における伝統的なものと、将来における発展的創造的なもののいずれも尊重する立場に立ち」「適切な調和点の発見に努めなければならない。」(S38国語審議会)とされています。

 

 引き続き国語教育の充実に取組んでいきたいと思います。

 

●漢字 制限から目安へ 交ぜ書きはしない

 

 国の国語施策は、戦後当用漢字表(現在は常用漢字表)、現代かなづかい、送り仮名の付け方、外来語の標記、敬語、国語一般について、専門家の集まりである国語審議会、現在の文化審議会国語分科会で議論され、その都度答申されて、内閣告示がなされてきました。その結果が、教育等に反映されて今日まできました。

 

漢字は、昭和21年の「当用漢字表」を内閣告示して、法令や公用文書、新聞・雑誌や一般社会で使用する漢字の範囲を示し、漢字数を制限しました。それは、占領政策というよりも、戦前からの政策として、漢字数を制限して、国民全体に教育を行き届かせようとの意図、民主化があったとのことでした。しかしながら、当用漢字表にない漢字は、「別のことばにかえるか、または、かな書きにする」「ふりがなは原則として使わない」(内閣告示)とのことであり、そのことが学力低下を招く、文化の継続を困難にする等、様々な批判が根強くありました。

 

その結果、昭和56年に「当用漢字場」が「常用漢字表」1945字に代わり、漢字の「範囲」から「目安」となりました。平成19年の文化庁の調査によると、印刷された漢字数は約4,900万もあったが常用漢字が96.4%、ネット出現漢字が約14億あったが常用漢字が97.0%でした。平成22年に常用漢字表は追加され、漢字が2136字を採用し、小学校から高校までに学ぶ漢字の範囲となりました。

 

 公用文での漢字の取扱いは、「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令)に定められています。それによると、公用文の漢字使用は常用漢字表によるとされ、常用漢字場になり漢字を含む熟語は、交ぜ書き標記をするか、漢字を用いて振り仮名等によって読み方を示すなどの対応を行うとされています。

 

 法令での漢字の取り扱いは、「法令における漢字使用等について」(平成22年内閣法制局長官決定)にあります。法令の漢字使用は、原則公用文に準ずるものとされ、専門用語等であって、他に言い換える言葉がなく、仮名で表記すると理解が困難である場合は漢字をそのまま使用して振り仮名を付け、交ぜ書きはできるだけ避けることになっています。

 

 最近の施策では、読める漢字を増やすために、教育段階で学んでいない漢字でも、交ぜ書きにせず、振り仮名を使うこと(H16文化審議会答申)になってきています。また、常用漢字表にない漢字も、振り仮名等を用いて読み方を示して使用できるものとしています(H22改定常用漢字表)。交ぜ書きを減らす目的から、謙遜、堆積、拉致、進捗、語彙、危惧、恣意、剥離、比喩、賄賂等の文字が出現頻度は高くなくても、常用漢字表に追加されました。

 

●「こども」は「子供」も「子ども」も可

 

 漢字の交ぜ書きでよく問題となるのが、「こども」と「しょうがい」です。

 

 「こども」は、元来は「子」の複数を示す語であり、時代とともに単数として使用され、近世になって「子供」の表記となったとのことです。「供」の漢字は、当て字(借字)だとのことです(「日本国語大辞典」「大言海」「新字源」)。公用文や法令では、当用漢字表時代は当て字を避けて「こども」でした。昭和48年に当用漢字音訓表が改定され、「供」の語例に「子供」が挙げられたのを機に、公用文においても「子供」と表記することとされました。ただし、法律においては、平成10年のNPO法制定以来、「子ども」が使用されています。

 

 「こども」の場合、「子ども」は交ぜ書きではなく、当て字である「供」を避けた表記といいうことであり、公用文では「子供」が使用されているとのことです。どれも正解ということでしょう。

 

●「障がい」は交ぜ書きで「障害」で可

 

 「しょうがい」の表記の変遷は次のようなものです。元々は「障碍」(しょうげ)という仏教語であり、さわり、たたりという意味でした。「障害」は江戸時代から使われるようになり、明治期となると、障碍は「しょうげ」「しょうがい」と両方読まれるようになり、「障害」「障碍」も妨げという意味で使わるようになりました。戦後、「当用漢字表」では使用実態から「障害」が採用され、昭和24年から「身体障害者」が法令で用いられ、一般化しました。平成22年に常用漢字表改定に当たって、「碍」の追加を求める意見が多数寄せられましたが、使用の経緯や意味等を検討した結果、追加しないことになりました。当時、政府も検討しましたが、法令等については当面「障害」を用いることとされました。

 

 「しょうがい」の場合、「障碍」の方が元々悪い意味があり、「障害」の方が価値中立の用例であり、「障がい」は交ぜ書きになるということでしょう。「害」自体の意味が悪い意味から、避けたいという気持ちは分かりますが、「障」自体の意味も、へだてる等の悪い意味があるわけで、漢字の表意を考えると漢字自体が使えなくなります。「障害」という使い方で私はいいのではないかと思います。要は言葉遣いというよりも、意識の問題だと思います。

 

●外来語は言い換える

 

 平成24年の文化庁の国語に関する世論調査によると、外来語の片仮名の意味が解らずに困ることがある国民が78.5%もいます。平成22年調査では、官公庁の広報等では、外来語・外国語は、日常生活で使われているものに限って使うべきだ(41.2%)、なるべく注釈を付けて使うべきだ(39.9%)と多くの国民が考えています。

 

 文化庁国語審議会では、「一般に定着していない外来語・外国語を安易に用いることなく、個々の語の使用の是非について慎重に判断し、必要に応じて注釈を付す等の配慮を行う必要」(H12)と答申があり、文化庁次長名で各府省、都道府県等に依頼通知を出しています。

 

 さらに、「近年、問題になっている外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉)の氾濫は、社会における情報伝達の妨げとなっているのみならず、伝統的な国語の良さを損なうおそれがあります。特に、官公庁や報道機関などにおいては、片仮名言葉を安易に用いることなく、個々の言葉の使用を吟味して、できるだけ分かりやすい言葉に言い換えたり、必要に応じて注釈を付けたりするなどの配慮が必要です。」(H14文化審議会答申)として、文化庁国語課長名で、各府省の文書担当課長宛に、依頼しています。

 

●「外来語言い換え提案」

 

 平成14年から18年にかけて、独立行政法人国立国語研究所が「外来語言い換え提案」をしています。178語あります。12年経って、定着した語がたくさんあると感じます。外来語は、関係者の中で使うと、その言葉を並べるだけで伝わるという便利さがあると思います。しかしながら、外来語を使用せずに漢字で言い換えることは自分自身の理解を促進して、多くの方々に伝える時に大事なことだと改めて感じます。

 

・全178語の外来語書き換え提案はこちらをご覧ください。

http://pj.ninjal.ac.jp/gairaigo/Teian1_4/iikae_teian1_4.pdf

 

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