伝聞法則について、このブログでも何度か記事にしておりますが、

(過去記事はこちら→

http://ameblo.jp/akagilaw/entry-11166389687.html

http://ameblo.jp/akagilaw/entry-11460924518.html )、

なかなかうまくいかない方が多いテーマとして、改めて、特に要証事実の特定についてまとめます。



1 特定の仕方

 結論からいえば、争点(被告人の認否や主張)、証拠構造(直接証拠型か間接証拠型か)、証拠内容、他の証拠状況、立証趣旨などから特定していきます。


 まず目を付けるのは争点です。被告人の認否によって、主要事実レベルでの争点がわかりますし、同時に、検察官が究極的に立証したいものもわかります。


 次に着目するのは証拠構造です。その争点からわかる究極的立証命題(主要事実)に関して、当該証拠が直接証明できる場合(目撃証言や自白など)は、主要事実=要証事実、という可能性があります。

 ただし、必ずしも主要事実=要証事実とは限らず、他に直接証拠がある場合には、補助事実=要証事実となることもあります。立証趣旨からして、主要事実=要証事実とは思えない場合は、補助事実の可能性を疑いましょう


 他方、直接証明できない場合は、その証拠内容や、立証趣旨(検察官の主張する、証拠と証明すべき事実との関係。規則190条参照)に着目し、主要事実の存否(不存在の場合もあります)の推認に役立つ、どんな間接事実が証明できるか、考えます。

 

 こうして、要証事実は特定できます。



2 特定の際の注意点いくつか

 特定する際、よく見落としがちなのが、時的要素です。直接証拠か否か、の判断の際に影響します。


 訴因では、通常、特定の日時・場所についての犯罪行為が明記されており、争点は、その特定の日時・場所における、特定の行為です。

 他方で、その証拠で直接証明できる事実が、直接その特定の日時・場所の事実ではなく、その近接日時、近接場所における事実であることがあります。この場合、間接事実が要証事実となります。


 また、立証趣旨が、「犯行再現状況」などとぼんやりしている場合は、要証事実は慎重に特定するようにしましょう。平成17年最高裁決定の事案のとおり、要証事実は犯罪事実そのもの、と考えるべき場合もあります。ここは、上記のとおり、争点や証拠構造からきちんと判断するようにしましょう。




論文力完成講座では、第2回でも扱いましたが、ここは、「思考過程を習得する」ことが肝要です。


司法試験の問題を解く際に、何度も同じ思考回路を辿るようにしましょう。