「三寒四温」───

/冬の朝漢字を分解していった

/コンコンと咳出て唯識論論ず

/俎板の音聞く朝の温きかな

/ちいよこれいと無きにしもけふバレンタインデー

ば様の誕生日は実は「バレンタインデー」。

/蕗の香の湯気はんなりと朝餉かな

/結果母枝に陽が差し掛かる芽疵かな

/春の穴芥の穴掘る亭主かな

/牡丹の冬芽に迷いありぬべし

/春光や氷に滑る鴨もゐて

/春は赤、春桃色にやって来る

/朝からのニュースとーさん不機嫌に

トランプばかり同じ齢とは

/潮の花早緑(さみどり)翠茎若芽

/備中鍬春立つほどに畝づくり

/春巻きや筍入れて春立つや

/過去問のいっつも無くて冬銀河

/畑土の掴めば温し四温かな

/蠟梅の三日目部屋に匂はざる

/要らないのにモッテけーとばかり余寒かな

/掻い巻きの襟にせかかる余寒かな

/あめゆじゅとてちてけんじゃ雨水かな

「雨水」はけふ2/18とかや。

 

倉石智證

どこかをいまも

どこかからかいまも

拾って来るいまを

ささげもつ

回想を

野に捨てしものを

 

どこかに今も

忘れ得ずに

激しく抱いて

水流が地下を流れゆき

溶暗のなかへ

とめどなく

崩れ流れ

忘れ得ぬ記憶がふと蘇りつつ

2023,2,21吉野友菜「祈り」(富山高校)朝日新聞

 

一方思ひ出はただに甘美で

漂ひ彷徨へば

どこかをいまも

どこからか今も

わたくしのなかへ

からかいつつゆく笑い声のやうに

からからと渇いて

待っているのだわ

あなたが探してくれるのを

もどかしくすぐそこまで来て

 

閉じられるどこかをいまも

どこかからかいまも

拾って来るいまを

とっても邪険には出来ない

間違ってたらゴメンナサイ

一緒に寝ようよ朝まで

朝まで一緒に寝よう

おお、なんと云ふ奇跡だったのでしょう

 

倉石智證

22,5,13マリウポリ地下シェルター、アゾフ連帯負傷者

 

水曜日は忘れない

水曜日は拘束されて

誰のために自由に歌えると云ふわけにもいかない

水曜日はだれかが別れる

何のために用意されているのだらうか

 

残酷な季節

燃え熾かる火が塔屋から落とされる

妊婦は腹に羊水を抱え

産み月を待ってゐる

クルーエルウォーに砲身が冷えていって

このまま標的になるのか

耐え難い悪臭メ

ネズミごと空に抛り出す

 

一歩が雪に標されて

誰かがひっそりと尾けまわす

いつか早く家に帰りたいものだ

誰彼となくハグして回りたいものだ

今だ行処さだめなく

たまたまけふが水曜日だったとしても

 

だめだ、だめだ、

このままトランプ・プーチンに乗せられて行ったら。

傷ついた兵士たち、若い戦死者たちは

浮かばれない。

 

倉石智證