さらさらと時は流れて

花屑の下照る道を

歩みなん指折り数へ

甍へと花吹雪舞ふ

よしなしことも消えて顕る

神さぶや幹の片辺に

掌を当てて水流を聞く

幹の間に人影過ぎて

いざやいざや

前に来て背に遠ざかる

幻の人こそあはれ

風流る風こそ運ぶ

髪に透く花片光る

光の絲に

無辺なる宇宙に流れ

谷に境にゆくへ定めず

いざやいざや

もて余す緑の凹地

懐かしく帰りてみれば

いざやいざ故郷ははや

 

倉石智證

デイの見送り。

ジャガイモの畝寄せ。

ネギボウズ。

/欠伸して畑の隅や葱坊主

/お気張りや葱の行く末ネギボウズ

/老描の道横切るや花芥

/山椒の芽吹きなにやら蝶躁ぐ

/処方箋なくて諍ふ花曇り

/ATMに並ぶ待つをの春の風

/フルートの幸わい天頂の花の苑

/無聊(ぶりょう)かなべしべからむと花の散る

/ジャガイモの畝に土寄す日和かな

/射干咲くやその片陰の花の冷え

/紫木蓮鵯の諍い鳴き止まず

/デイの日の庭に下りたるばーさんの

眩しいて云ふ眼にマスクして

/ばーさんの兄が植えにし百日紅手に触らせる頼もしきかな

/木瓜の花その由来聞く花灯り

/ネアンデルタールの裔(すえ)まじりゆく花見かな

 

倉石智證

ぼくは聞いてゐますよ、

と云ふから振り返ったら今年は君子闌が咲いてゐた。

 

ナラティブとして森に入ってニホンカモシカと対面。

大きな木が倒れて来て───

 

父は穴を掘れと云ふから穴を掘ってゐたら

それはいつしか母になり

妻になっていた

ずいぶんと上から目線だなぁと思ったりもしたが

それもいいね

下から覗くとびっくりするくらい空が青く見える

そんなことはしょっちゅうあって

ぼくは聞いてゐませんよ

と云ふが

のっけからウソばっかしと笑われて

確かにむかし、君子闌に蝶を泊まらせて

長い昼の時間を

蝶が生まれてカタパルトして飛んでゆくのをじっと待って見ていた

なんのかのと愛してゐる妻に褒められたいためにだ

後々妻は蝶と対峙することになる

 

正気になって森の奥深くに入ってゆくと

倒木を蝶が幻のやうに横切ってゆく

 

倉石智證