病気お見舞い。

/富士色々百万遍の鳥の聲

/おんびんに言葉の意味や春炬燵

/病得て花の咲くのを知りにけり

/水仙の足元飾る百姓家

/うつむいてクリスマスローズ春告げる

/山茱萸や子供はマスクして家に

/枯芝に紅梳き込むや梅の花

/海を出てひげ根は牡蠣の恋心

/風流や風呂の窓から椿かな

/庭前の松に鳩ゐる眸眸紅く

/道に出て釜無川に春の風

/帰り来て恙無しやを線香に鉦打ち鳴らし恙無しやを

/串本やペンシルロケット三度まで長沢芦雪寅の画を描く

/春は鯛尾頭付を兜だけ

/目玉焼き押しくらまんじゅういちぬけた

退院した義兄の家に見舞いにゆく。

すっかり痩せちまったね。

眼鏡の奥の眼が昏ずんで、

「生存率5割なんだって」。

すっかり気弱な風である。

生きて帰って来ると死生観や哲学も変わるんだね。

もう多くの百姓仕事は手放すことにした。

 

倉石智證