皇帝ダリア霜窶れ。

兄弟(けいてい)姉妹のごとく朝夕に声を掛け励まし、立派な誇らしげな花を点けるんだよといっつも挨拶を交わし手を合わせていたのに、まったくさやうならて云ふ嘆きのやうな声が聞こえる。朝未だき陽が上がろうとする前に、畑一面に白い霜が降りた。予報では南アルプス市は最低気温は2℃。「オリオンは高く うたひ/つゆとしもとを おとす」。皇帝ダリアは寒気と霜にはめっぽう弱い。葉は霜に取り付かれれてちりちりと巻き上がるやうに萎れて来た。4月の芽吹きから、あんなに声を掛けて丹精して来たのに、残念だね。呆気ない。夏が長過ぎたのだ。冷涼の秋の訪れと同時に、満を持したように茎は天へと成長を早めた。あゝ、せっかく蕾が紅色を含むところまで来たのに、そこへ西高東低の冬がやって来た。ば様を送ったばっかりなのに、あゝ、またさやうならだね。

オリオンは霜を落とす、

いとけなき皇帝ダリアの兄弟姉妹の紅色の蕾たちよ、

嘆けとて、

さやうならだ。

 

倉石智證