「里古りて柿の木もたぬ家もなし」(ばせう)
よくないなぁ。一言で云へば気力が喪せた。けふはまた柿を持参する。「柿だよ」「目を開いて」、と云ってもすぐに閉じてしまう。あれこれしてだいぶ経ってからようやく柿だと認識した様子だった。だが、たいして関心と興味があるわけではない。10:30からの500㏄の点滴が了はる。留置針の周りは赤い血が滲み、皮下は紫色の内出血が広がってゐる。血圧は昨日は160台だったがけふは140台に下がった。一方、酸素飽和度は昨日の92からけふは96に上がった。ところが不安に思っていた通りに食事がいっかな進まない。朝食は2分と昼食はゼロに近い。一瞬じ様の最期の入院生活を思い出した。じ様は体力が衰えてゆくとともに、自分で少しずつ食事を舌で押し返すようになった。いやな気分。ホールのコーナーが少しにぎやかになる。リハビリの時間になった。車椅子のお年寄りたちが三々五々テーブルを囲んで集まって来る。点滴を外しに看護士さんが部屋に入って来た。眼を瞑ってゐるばーさんのリハビリはとっても無理だなぁ。看護士さんにあらためてバイタルを聞いて、くれぐれも院長先生に診断の相談を受けて下さるようにお願いしてエレベーターに乗った。外表にはまた小雨がパラついて来た。
/君が代蘭咲くはひとつの慶事ならむ
倉石智證



