上高地から涸沢、
秋めく花模様。
秋の日はさらさらとさらさらと流れてゆくのでありました。上高地はさすがに下界より涼しく、栂の大木の林に入ると、鼻の奥がつんと冷えて来るのです。秋の花はノコンギクがまず足元に出迎えてくれる。白い花はサラシナショウマの優美な花穂、ぶきっちょなカニコウモリ、写真にはピントがずれて載せませんでしたけれどセンジュガンピが控えめに咲いていました。紫色と云へばトリカブトの色、ホタルブクロ、ソバナ、シャジンソウは見当たらず、目立たないけれどカメバヒキオコシが登山路にしな垂れ掛かっているところもありました。それに黄色はアキノキリンソウ、キツリフネなどが忘れられない。やっぱりしかし山路も奥に入ると赤い色が気になり出します。ゴゼンタチバナの実の赤、ガマズミ、それとなんといってもナナカマドの実の赤、赤、赤や赤です。真っ赤に葉が色付く紅葉のシーズンがもうすぐそこまでやって来てゐます。夏の背(そびら)を追いかけて、秋は山の上から大股で下りて来る。天狗の団扇の一振りで涸沢カールも真っ赤に色付くことでしょう。秋の日はさらさらとさらさらと流れてゆくのです。露を帯びていたものもやがて乾き、わたしは急ぎ足で写真を撮り、それを思い出の大切なものとして宝石のやうに大事に写真箱に仕舞ふのです。
倉石










