雨の日はしょうがない。
/秋霖の耳元さわく山の宿
/山径に人なつかしきシャジン草
/ヤマハハコ母子であれば抱き合ひて
/砂糖ぐぁ子白山ボウフウちちちちち
/赤い実やゴゼンタチバナ秋深し
/涸沢に鳥を待つ実やナナカマド
/秋霖や山の寝床の永々し
/熱低の変じて台風上高地
/連泊やすることも無しおお鼾
/廁まで傘さして行く四回目寝た気を冷ます涸沢ヒュッテ
/石を打つ屋根打ち雨の秋深し
/みな旅人となり山景を行く径を行く
/水聞くや秋や来ぬぞと呼び覚ます
/秋の花に地味めにカメバヒキオコシ
/テン泊の人に冷たき秋の雨
/テント背負って涸沢に来て秋の雨
/ショベルカーの石撃つ音や秋深し
/秋の日の河原に白し横尾かな
/ミゾソバの金平糖に色愛(ぐわ)し
/山路来て杣菜ゆかしきシヤジンソウ
雨音を聞いています。
台風が列島にのし掛かっています。
雨の日はしょうがない。
涸沢ヒュッテに連泊です。
北穂は指呼の間、雨が上がり雲が解ければ
大キレットに向かうに槍ヶ岳が聳え立っている。
それこそが今回の究極な思考の解でした。
多くの感情を呼び覚まし思考の一点の如くに槍様が聳え立つ。
わたしたちは右に傾ける往古を見る。
屋根を打つ雨音を聞く。
雨の日はしょうがない。
明日は奥穂、涸沢、北穂にかかるモルゲンロートを拝みて帰らんとしやう。
青春がきっとこのまま了はらんとするのではなく。
倉石智證




