デイの日の一日───

/庭師ありて帽に紅葉の簪(かざし)かな

/熟し食ぶばばは歯抜けや生身魂

朝(あした)、家を出て、夕べ家に帰る。

ばばをデイに送り、妻には取り急ぎ大洗濯。ばばには皇帝ダリアが花芽を付けたのも、石蕗蕗が黄の花に咲いたのも、百日草が不思議な蕊をこさえたのも、末期の秋明菊の傾り咲くのも知らない。

秋晴れや、亭主はまた揚としてまた高処に上がり、櫛比せる村屋を眼下に眺めやる。何度でも「気を付けてね」と妻の呼ばわる声、こんな秋の日のよく晴れた日には遠くの工事のシャベルカーの音や、辻角のタチンボの声などもよく聞こえてくる。幾度か庭に往来して、やがて縁先の日だまりにティータイムとなる。

亭主の好きな赤烏帽子、ご存じないのはオヤジだけだ。お帽子に紅葉の簪が付いていた。秋の日は刻々と過ぎていって、有線が子供たちに早や家に帰るやうに急き立てるころ、タタカイスンデ日が暮れて、テールランプも鮮やかにばばがデイから帰って来る。

ばばにはばばの日がながあって、でも花のことも松のことも、大洗濯のこともばばには永遠に知らないことだった。

 

倉石智證