わたしがあふれてしまふ/わたしは自分の家なのに迷いみちになって溺れそうになって息が詰まって幾度も前のめりになるのをわたくしでない誰かが支えてくれた/親しい人ではないがどうも良く知ってゐるらしい/ヤバさうだから顔は見たくないんだ/いつもどうもそこいら辺にゐて/気分次第でどっと近づいて来る/あなたの人生はって精査し始めるんだ/襟首をつらまへられるってこのことなんかな/ここで、ここいらへんで諦めてもいいんかなと思はせたりする/大事なことはもう過ぎつつあってそれは取り返しがつかない/バカにされてもいいからもう人間でありたく/くたびれ切ったままでだらしなく/もうなんもでけんだよと/ほたらかし、だらしなく/首ごと車椅子にぐったりする/もう世間が云ふやうな元へ戻すことは出来ない/やあ、あんたでしたかと/ちょっぴり親し気に/でも気持ちを許したら一気に攫われるに決まってゐる/
わたしがあふれてしまふ/わたしは自分の家なのに迷いみちになって溺れそうになって息が詰まって幾度も前のめりになるのをわたくしでない誰かが支えてくれる/大きな昏い翅のそんな大きな黒い影に入ってたちまち一気に攫われてゆくのかもしれない/わたくしが目まぐるしく変わる/わたしはもうまるごと眠たいばかりだ
傾眠───
怖ろしい力でわたしに襲って来る。
もう抗いやうもない不思議な力だ。
永遠の力を得たかのやうに、
わたしは深々とそれに身を任す。
倉石智證