花殻摘み/紫陽花の葬送

怱々と送らねばならないだらう

もう息絶え絶えのものたちに

生命の瀬戸際にあって

正直最後の静かな音なひに瞑目する

鉱物と生物の交じり具合とか

星空の光ぐわいとか

あらためて樹液に星々ちりばめられて

ついてはまぐはひて云ふ言葉がいいだらう

まざまざとする

その湿って止まない森に出掛ける

さうやって言語言葉にならないが

いくつもいくつもの大輪の花を咲かせ続けた

花殻摘みを行ふ

いくつもの花の頸をチョンしてゆく

来年の約束のために

地中の鉱物の囁きに還す

いくつものあのものたちはなんだったのか

或る日突然のやうに表れて

色に振舞って、風にゆれ、露を帯び

私を何度も庭前に呼び

と惑わせうろたえる

感動させ心配させる

けふは心底寂び寂びして

花叢の寂びしも、どこへ行くのやら

消えて仕舞ったら

花芽から突如大輪に咲かせたと同じやうに

宙から表れ、また宙へと消えぬる

般若波羅蜜多

行き先も告げずに

 

倉石智證