ダンゴムシは微妙だと思ふ

ダンゴムシは嘘をつかないばかりか

丸まる

数へ切れない脚をお腹に抱えて

毎朝ここの水場にやって来る

 

掌に転がす

たちまち丸まる

呼びかけてもずっとそのまんまだ

 

銃を突きつけといて降参はないだらう

あんたに指示される云はれは無いから

どうも素直になんかなれない

じいっと、かなしいことは悲しいんだ

土だらけのぼくの長靴に寄って来て

そのまましばらくぼんやりしてゐる

 

朝、植栽の中に入ったら

土が塚のやうに盛り上がっていた

決して硬い甲羅でもなんでもないものを

夜更けて夜中ぢゅう

もうゐても立ってもいられなくて

もこもこ土の中を往来したんだ

清算が在るわけではないだらう

ダンゴムシは微妙だ

云っておくけれど

ダンゴムシは決まって平和主義者なんだ

 

倉石智證