一ト日昔の風が吹いて───
花のお便り、雲のお便り
さうかうしているうちに世の中はいつもの通り始まって仕舞ふ
とっても従いていけやしない
それどころか
ややもすればおいていかれることになる
もうひらがなのおさらいなんてや~よと
ば様ははやばやとお眠むのなかへ
ぼくは蜜蜂や蝶の跡を追いかける
ハシバミは電柱の影に紅花を競わせ
毛蕊花は十二本、畑の端に僕の背丈を超える
皇帝ダリアは云ふまでもない
この先どうなるんだらうと心配になるほどだ
晴れさうで日暈、どんみりと梅雨入り前
紫陽花は毬を色々に結び続けてゐる
うれしいやらうれしいやらで心昂る
それは雑草たちも同じなんだ
まったく何億劫て云ふ世代、
雑草がめしみしと地を割って芽吹き来る
ぼくは畝に沿って這いつくばる
汗が土塊に滴る
善悪、好悪はわたしが選ぶんだらうか
山野自然と人家畑の間に生え来しもの、
それはいつの間にか雑草と名付けられた
おーい仲間たちよ
私がそれらを蹴散らしてゆく
刈り払い機が獰猛な刃を回転さす
きらめき一閃頸を刎ねられてゆく
青きものたちよ
花の四時、人の四時もそのままだ
天地がひっくり返るわけでもなし
燕たちが土蔵と母屋のいつもの海峡を素早い仕草で渡っていく
おーい雲よ、
と空に呼びかけたくなるではないか
倉石智證