原始スープを飲みたいな

みんな原始スープになってしまふ

1971東松照明「波照間島1971」(22,12,11日経)

とびかかるではなく柔らかに受容し、そっと映像に置き換えてゆく手つき

 

ヘリコプターが落ちた

骨も肉も意見も

みんなバラバラになってどこかへ落ちた

山の奥深く

海の底ゐ近くへかもしれない

大人の声に交じって赤ん坊の泣き声まで

今となっては戦闘機も戦車もミサイルもみんなみんな原始スープになって

原子爆弾が落ちたらそこから先は間違いなく原始スープになるな

最期に世界を見ているはずの目玉までとろけた

 

意思も意図も何にもないのに

ふとしたきっかけで

そこいらから花が無数に披いてゆく

なんて云ふこともあるんだらうな

赤ん坊の声がまた聞こえて来る

閉じられレる

原子スープが飲みたいな

それこそそれには何の意図もなく

考えるたんぱく質

みんなアミノ酸になって

 

倉石智證