梅捥ぎにゆく───

 

美しい日と云ふものがあって

すべてに成長著しい

遠慮は要らない、と云ふのであった

軽トラでゆく土手にはキツネノカミソリが咲いていた

かーさんと梅捥ぎに行く

初夏の空へ小梅は少しくまるまると肥え

青空へと手を伸ばすと

他愛なく手指に零れる

今年もあゝ、梅捥ぎにゆく

雉がどこか遠くで鳴いてゐる

五月の風は畑に高貴に

それでも今年はなにかさみしい

どうしてもほらそこに足んねえものがある

いつもはお茶するばあさんが

今年はとうとうお留守番

すべてに惚けて滾々とまたひとり眠ってゐるのかな

コンフリーのむらさき

ナヨクサフジのやはらかい紫も

光に、土手に腰を下ろして草笛を鳴らさうか

どこか愛なしく

オッペケペッホーペッホーホー

 

倉石智證