円安。

ああ、なにか悪いことが起こらなければいいが…。

 

いくら退職金もらったのか国民に公表しなさい。「国民に尻拭いさせ大綬章」(朝日新聞)黒田東彦前日銀総裁のことだ。円安で庶民は物価の高騰に苦しんでいる。ティッシュもスーパーのパックの内容物もみんな小さめになった。主婦たちは品物の前にためらい手に取りためつすがめつしてゐる。それにつけても安倍ノミクスよ。「こんな日本にだれがした」。

 

なぜ安定的に物価が2%にならないのか。『雇用・利子・および貨幣の一般理論』(ケインズ)。正しい物価は雇用に基づいてゐる。雇用が生み出す現金が市場に持ち出され、需要されることによって、オン・デマンド───物価が乗数効果されることになる。アベノミクスは雇用を増やしたと嘯くが、雇用の量は増えたが、雇用の質が大いに落ちた。世帯収入が年間200万円ほどの人口が国民全体の4割ほどにもなると云ふ。

国民は国の借金のことをうすうすアヤシイと勘づいてゐる。そればかりかアブナイと忌避し始めているのだ。約1300兆円ほどの大借金は国民一人あたりにすると約1000万円ほどになる。どんな人々でも庶民はお財布のなかの予算制約によって消費に赴く。自家に大借金があって贅沢をする家計が在ろうはずがない、と同じやうに、国家に大借金があって個人が好き勝手に大盤振る舞いするわけがないのである。

 

 

国家に大借金があると云ふことは個人の自らの社会保障における信頼が揺らぎ始めた、ということだらう。国は狡猾にも年金支払いの不安を若い国民に転嫁し始めた。NISAはまったく社会保障の自己責任化のことである。しかも、国家に対する不信用があたらマネーフライトを引き起こしてゐる。企業は儲けを国外に置いたままで、NISA等、円を買わずに“外”を買うようになった。ますます円安に拍車がかかって来ている。

 

円安───

・エネルギー自給率=国際競争力⤵→貿易赤字→円安

・国の大借金(財政不安)→金利を上げるに上げられないジレンマ→円安

▲金利を上げる→予算を組めなくなる

▲金利を上げる→日銀の“逆ザヤ”→通貨不信任

・国の大借金国債評価かってAaa→A1に

国の財政及び生産性への信用度⤵→円安

・人口減少(労働力人口⤵消費人口⤵)従属人口⤴=生産性⤵→円安

・NISA等マネーフライト

・稼ぎを外に置いたまま→“円転=円高”が起こらない

 

 

通貨は信用のうえに成り立ってゐる。中国の侵出のみならず、大震災等、国家の財政が危機的な状況になったら、いやそれ以前に国債が暴落するようなことがあったら(“炭鉱のカナリア”が機能してゐない)、たちまちインフレが日本を侵襲する。日本の大借金問題は責任者が不在という点など“裏金騒動”と通底するところが大いにあるが、裏金ごときの問題ではないのである。

 

すべてのリアクション:

1宍戸 周夫