立てば芍薬───

/草引いて花壇に呼ばる私かな

/初蝶にあらず初蚊に射されをり

/藪漕ぎややぶさかでなきゆくへかな

/丘に生まれ星に育つ兒のよい子

/虫の目やものの芽の地衣ものさわに

/茉莉花(まつりか)が咲いた茉莉花のちるを

/どんみりと綾目花咲く家居かな

/畝寄せて馬鈴薯の花うすむらさき

/唐さんの腰巻お仙紅テントけふも旅ゆく昭和桃色

84歳。合掌。

/芋の畝長き棒なとさつま芋

さつま芋定植には長い棒を斜めに畝に挿し、

そこに苗を差し込む。

/定植はいずれにしても気持ち良き

/芍薬のしゃなりは歩く姿かな

/足止めて蕪村翁や花茨

/百姓家喉んどうるほす春の酔ひ

/門柱にたれか来る人春の風

/石楠花は空に花群を放り上げ

 

倉石智證