他者の気配が差し出されて思いがけなくどぎまぎする

わたしがつくったモノの形の中へ

たくさんな人が出は入りして

わたしは運命論者のやうに佇立して

道路に投げ出された大きく黒く伸びた影に

陰鬱に肯く

2020,9,14なおみ「私は何者か」

「私は一つの説明で当てはまる存在ではありません」

 

ほんのささやかな約束事だった

その小枝をできるだけ目立たないところにそっと置いてください

ただ拾ったものですからいつかは返す

それをいつのまにか

まだ何処にも捨てられずに

いつのまにかぼくのポケットに在るだなんて

 

多くの遍歴の中で

無数の部屋部屋を経巡って

さうして呼気臭き君たちに出会った

窗はなんの約束事にもなりませんか

あそこに見えるものは

と指さす

出ていこうとしてはっきりと鹵獲された昆虫のやうな自分に気が付く

 

自由を得ようとしたら

突然陽の光に曝されて

わたしのポケットの中で小枝が不意に押し潰される音がした

あなたはこんなお話しに疲れましたか?

 

倉石智證