たまたま水遊びに来ただけだよ青の

そんなものが水辺の中にゐるなんて知らなかったばかり

ひっそりとその上に乗る

あの山を越えて川も越える

水源まで行かんでんええんよと

ふらんぼんは口から泡を吐く

2011谷口広樹『留守に訪ねて来る気配』

 

季節が移り変わるたびに赤になったり青になったり目まぐるしい

水の中と陸の上と空の遠く

ずいぶんと離れ離れになったね

わたしかと云へば

風に打たれたならば

背中を刳り抜いてみよかとも想ふ

木の幹のやうなわたしだ

木屑が言葉のやうにはらはら散って

ずいぶんお見通しがいいぢゃあないか

 

ああお見通しが良くなった

完璧に空が見える

掌に木屑を並べて溜めて

それをふっと吹いたらさやうなら

一度は約束までもしたのに

無数の言葉になって散っていった

 

倉石智證