ゴースト、そこへたどり着ければいいが
ゴースト、それはいかにも優柔不断だ
彼女の指が曲がったのは
それは土と荒草の所為だ
1978利根山光人「祝祭」
あそこの天辺に幻がある
うっくんうっくん曲がりくねった道を
最初から云ひ聞かされはしたが
草を噛む
するとゴーストが白い精霊となってわたしの眼の前に現れる
畑を分割しなければいけなくなった
土をあちらこちらで掘り返すたびに
鍬の精に問われるのだよ
樹液が滴るのにはまだ大分間がある
どこまで昇れるのかね
顎の下に鍬を入れて
うっくんうっくん首を振る
百年くらいだなんてアッと云ふ間だったね
指が曲がったままばーさんはサインを出そうとする
働き者の太い逞しい指だ
いまやはや
身の周り中を飛び交うゴーストに
やはらかく、戯れてはや
「ああ、清々したよ」
と独り言ちる
2019,11/14「せっせっせ」
倉石智證