血は立ってゐるがよからう

血は立ってゐる

少しでも休んではならないと囁き続ける

ばーさんは指を握って放す

指を丸めてそこに太陽の光を集めやうとする

 

湖はいま休んでいる

 

1930パウル・クレー「アド・マルギネム(周縁に)」

 

四三が六を云ふ

一辺の長さを知らせなさいと伝令が飛ぶ

兵隊さんはつらいな

血は立ってゐるがよからう

血は凍ったまま立ってゐる

ぱーさんはいま病棟にゐる

ばーさんはもう横になるしかできなくて

兵隊さんススメ

ばーさんは指を丸めて太陽の光をそこに集めやうとかたく目を閉じ

ばーさんはひとつ面白い話でもしやうとして───

 

湖はずっと眠ってゐるのか

 

倉石智證

武満は音楽を聞いた

「不思議な気候に棲む人は、

そして愛らしいけだものたちは、

滑稽な音楽に打ち興じています」

22,4,3