ボーイ、元気にしちょると思ふが

どうかねその後は

順調にロードを遡り

懸崖はあそこだ

陽が差し掛かり滴るやうにアーチを描き

だからみんな目指してゆくんだね

なんにしろ自分の足でしかゆけない

なんだらうこのリズムは

みんな走りゆく隣りの鼓動を聞いてゐる

真っ赤な、それでいて素直な原子のリズム

ボーイ、下手な歌よりもいいさ

指を鳴らして高みにゆく

青春てあまりに輝かしいものだから

足を踏み鳴らし

あの雄大な海の湾孤に沿って

永遠に呼びかける

泡立つ海潮を渡って

大事なものはみな向かうから来ると云ふ

待てばいいのサ

2011谷口広樹『留守に訪ねて来る気配』

 

ボーイ、樹液の中を

秘密めかして届いて来るものもあるらしい

ミロヨ、無数の樹冠が入り乱れ

透明に錯綜し

それでいて間違いない

秩序とは内と外にあって

だから大いなるものを聞きに

眼が覚めたら出掛けやうか

ご機嫌はどうかねボーイ

 

倉石智證