赤玉ポートワインは呑んでいるかね

まさに今のきみに正しいと思うが

1924赤玉ポートワイン“日本初ヌード”寿屋

 

ベンガジまでの距離は遠く

亀の背中に乗って歩く

気持ちよく揺れるロコモーション

目蓋が亀に閉じられて

砂漠であろうと海の中でもへっちゃらになる

 

ところが木の枝を逆さに歩くやうになったら

急に頭に血が集まり重たくなって

どうにもタクラマカン

早朝のさやぎ、風の通りはすばらしく

海馬は見事に洗われるがごとくで

眼から柳が生えた

北上に柳青める

北上に哭けとごとくに

1938,4,30赤玉ポートワイン“戦時色に”

 

少しずつ自分が風と温度に溶けていって

もう少しで自由になれると想ふ

飛び立てよ

酔っているのではなく

ああ、大事だね

君の手に委ねることが

ただ眠るのだけはしたくはない

何もかも過ぎたらほっこらと

きみの大樹のやうな幹にぼくの思考を

預けて見やうかとも想ふ

なによりも夢の枕に

なによりも他愛無く

 

倉石智證