1957瑛九(えいきゅう)「空の目」
わたしは反芻する
わたしは繭の中のものなのか
わたしは眠ってゐるのかもしれない
多くのものの声の中で
気持ちのいいものだけを反芻する
また多くのことは聞こえないふりをするのだ
滾々とこんなにも眠れるのが不思議なくらいだ
するとその向かうにぼんやりと道のやうなものが披け
花ならば花弁の外へ
ゆるやかに風の中へ
飛べるやうな気がする
みんなが誘ってゐる
なんだらうそれにもまして明るい此の光冠は
幸せはさらにわたしに安心を約束するばかりだ
食べられないこと
生をいったん拒否すること
それらはわたしにもほんたうに
ほんたうは分からないことだ
道の外へ
誰かがわたしを
探しに来ているのかもしれない
倉石智證