どんな願いが込められているのか

道を歩く

敷石に、どんな願いが込められているのか

ほとんどの径はまだ道には程遠く

はぐれた子供が寄る辺なく歩く

1973高山辰雄「食べる」悲しそうに見えるわけは…

子供が無心に食べてゐる姿を見ると(18,5,15朝日新聞)

 

駅舎は朝か夜だ

まだ真っ暗な中を貨物列車に飛び乗った

「おい、起きろ」と激ししく揺すぶるものがゐる

貧しくて飢えてる者同士はいいね

傷ついてすぐに仲良しになれる

イヌコロのやうに抱き合って何千㌔と旅をする

もうドロボーするしかないのだ

空っぽの家に飛び込んで

腹に詰められるものは腹いっぱいに詰め込んで

大きな木の下に走って

木の幹に抱きつく

もうどこにも行きたくはないんだ

ぼくを、僕たちを引き離さないで

 

───で、夢から覚める

舗石を引きはがすと硝子の破片のやうな空が広がり

水たまりに影が映る

ほんたうにみじめなものさ

どん底に行ったら

神様は振り向いてくれるのかな

恐怖、怒り、絶望の地にあって

100万人の億万人のrefugee がうまれてくる

 

倉石智證