それはそれで愉快な悪戯になるだらう

ホールから小動物が顔を出す

全員が全員人間の味方と云ふわけにもゆくまい

こうしている間にも木の根を越えてゆくトレイルランナーがゐて

もはや天狗としか思へない

午後のこんな時間に登って行って降りて来る

お山ではおほかた

赤になるもの、

青のままになるもの、

黄色に枯れてゆくもの

などが自身に決まって来た

石塊は冷えて来るし

ガスは下界から湧き上がってくる

素早く牧場までに下りるには

そんなには全部に関わり合ってもいられない

さやうならを告げ手で触れ

背を後にする

木の根巌根を跨ぐのもたいへんだ

午後四時近くともなれば木のホールからも

無数の白くもやったものが顔を出し

かくれん坊のごとくクスクス笑いが聞こえる

一緒に遊びましょって

何人かは騙されて

おおきく巌塊から落っこちたり

山の懐深く入ってそのまま帰ってこなかったりする

お山の表と裏とは違うんだ

こんなにもごつごつした太い幹に抱きついて

表へとひょいと出た

ちちろ虫が足元にちちろちちろと鳴いて

何頭かの牛がうまさうに青草を食むでゐた

 

倉石智證