木の根のネ
あのね
幹はいいね
あのね空に枝を張り巡らせて
鳥が巣をつくりに来る
四六時中いい風が吹いて
遠い異国の話なんかも運んでくる
枝は自由気ままでいいね
とくに、夜中ににょっほりと
思い出したやうに硬い表皮を突き破って
芽が、目覚める
人間だったら大変なことだ
頬っぺたと云はず
脇腹や目ん玉にも
ところかまはずにょっほりとくる
木の根のネあのね
地面の下の方のことはどう考えても不十分だ
まったく見たこともないわけだから
精々が蚯蚓との会話
和毛が生え繊毛が生え
地下深くどのくらいまで辿りたどってゆくのだらう
真っ暗闇の中でもう焦っても仕方がない
水音を聞く
そしてそれがまさか地表を越えて
幹を真直ぐに空へ天辺に運ばれてゆくなんて考えたこともない
木の根のネあのね
岩根にしがみついてゐるね
たいしたもんだね
さうやって幹がしっかり立ってゐられるやうに
岩に取り付いて守ってゐる
えらいね。
倉石智證




