なぜ雨が降るかと云ふときっと水がお空に溜まっているからだな

誰かが悲しいがあってお空に雨が溜まるんだ

いやきっと燕たちが喜ぶからお空に雨が溜まるのかな

代掻きの畝でお螻蛄(おけら)たちが

「これっくらい」と云って大仰に騒ぎ立てる

ぼくはこっちにゐて

これっくらいの喜びと希望があって

でもボートの中に水が溜まってゆく

泡と一緒に海の中に沈んでゆくと

海ってほんたうに碧いんだ

こんなこともあって海に悲しいがいっぱいに育つと

やっぱりお空に海が溜まるんだな

緩やかな季節風は帆や船ばかりか人を満載したゴムボートも運ぶ

人々が黙り込むと悲しみだけがふくらんで

やっぱりお空の上には雨雲がいっぱい溜まる

なぜ雨が降るかと云ふときっと

普段は馴れ親しんだお水がお空に溜まっているからだな

誰かが悲しいがあってそれでけふも雨が降るのかな

 

倉石智證