山水に遊べば───

惆悵(ちゅうちょう)と緑(みどり)百色紅に映ず

翠巒(すいらん)将(まさ)に緑を滴らす

碧空鶯の声のどこかに

山を降りれば千曲川の蛇行す

駅埠(えきふ)の賑わひは黄の菜の花のおぼろ

滔滔と緑水の黙(もだ)は柳の岸辺を洗う

一篇、夜半亭白頭翁、是昔紅顔の美少年

昔語りに酔顔

酒器、酒杯を重ねれば和顔たちまち紅に

昂揚す一炊の夢物語は破顔カッカッカッ、

ビールの泡に消ゆ

帰去来兮(かえりなんいざ)。

山峡(やまかい)は故郷の近く

ランチボックスを広ぐ

春昼水音を聞ききに

シューベルトの「鱒」は野辺伝いに低く高く

眼を転ずれば春色頓(とみ)に新たなり

鳶の番は青の空にうち重なりて

妻を傍らに

時短を振り返らば

長嘆息

のぞき見る

互いの顔の皴深きを慰まむ

 

陶淵明

帰去来兮(かえりなんいざ)。

田園将蕪(でんえんまさにあれなんとす)、

胡不帰(なんぞかえらざる)。