/雪溶けて田の字田の字は無いけれと

/ウグイスの聲拙くも啼き初めて

/常念も見えずなりけり霾つちふる

/室むろを出て林檎小布施の販売所

/雪柳ただ投げ入れてあるばかり

/雪残り一村まるで春おぼろ

/神楽峰佐保姫の裾あの辺り

/雪影や千曲川縁べり水温む

/雪捨て場ブルドーザーの音高く

/雪国や大の大人が道に出て

/天ぷらや春は苦みと蕗の薹

/とりわきて春耕即ち農初め

/仏の座天気予報の二、三日

/存問や石蔭に影日脚伸ぶ

/菠薐草とエンピツネギを屋敷から

/ほんたうに頸から落ちて椿かな

/ぽってりと椿の花の落ちて熄む

/妻とするイモ畝づくりほめられて

/いまだなほ野にある余寒震災忌

/碑いしぶみに名を探し見る触れてみる

/船縁を叩く海には冬蛍

/碑や雄勝に鐘のひとつ鳴る

/話すうちに涙溢れて雄勝かな非番の母は津波の中へ

/ドンコ汁震災からの十二年

/刃を入れる大根生還した看護士

/海の見える病院雄勝夏花火

(震災前の雄勝病院)

けふはじっちゃん足洗ってやっから静かにしてろって。

気持ちいいぞ~。

逃げれば逃げられたのに逃げずに介護者らとともに波に攫われた。

患者40人全員と医師、看護士、職員24人(30人のうち)。

「お母さんは縄ででも縛っておかなければ、出掛けて行ったでしょう」

非番の母は病院に患者を助けに…。

 

倉石智證