/こだわりは日影の雪の溶けかねて

/鳩サブレに眼と眼が会ひし春の宵

/出生は高尾の辺り梅の花

/春光(はるかげ)やシクラメンの花光射す

/水仙の確かに背伸びしたやうな

/南天の春を燥(はしゃ)げり厨辺に

/ばーさんに三寒四温襁褓寒む

/納豆を顎に付けたる生身魂どうも左目見えにくきかな

/留守すればネズミ喜ぶ四温かな

/まだ寒いからと退屈な靴だ

/草萌えやうから来たりて焼うどん

(妻の従兄の正くん)

/藁づとがあればなにやらなんにでも

/ご当地は春 地中海のマグロ

息子はまた上野から買って来てくれた。

ショートステイのすぐ近くの畑で。

/下草も萌えて梅見のほかりかな

/葡萄樹の皮剥がされて虫出る

「啓蟄」もなんのものかは。

眠るのがお仕事。

/ばーさんに三寒四温健康椅子

/春光や神宮に立つ青春譜

子どもが小さいころ家族でここいら辺りでたくさん遊んだ。

むろんこんなでっかいものが建つ前だ。

植栽に余裕があり、日影も少なく、穏やかな時間があった。

文明の悪しきが道の瀬戸際までぎっちり迫ってゐる。

隈研吾さん、植木と、もう何年も前からあった天然の樹は違うんだ。

地霊を信じない資本主義者たちが首長とともになにやら企んでゐる。

「学徒出陣」があった因縁の地だ。

地を揺るがす『海ゆかば』の大合唱が聞こえて来る。

我らの地祇よ、守ってくださいね。

息子は当時を懐かしんで、神宮外苑にお散歩に出掛けた。

 

倉石智證