「雲耶山耶」
雲耶山耶
あれさ、えへ
山に天狗が
百里を翔んで悪さするわけでなし
あれさ、えへ
山には雲が湧いて
いつものことだよ
雨をもたらす
雲か霧か、虫たちに聞けば
それは風だと
あれさ、えへ
白い装束の千人が
昔大勢の人たちが平地で死んだと伝える
天狗の団扇は雲を呼ぶ
忘れるわけではないが
径なき道がないころに
ここに登って来てひとしきり
御饌を神に捧げて
幣を磐室に
すると天狗が天駆ける
あれさ、えへ
天地に祈る
天駆ける豊穣の
鳥に雲に雨に雪に
風が伝える
耕して植ゑる
ただそれだけで
奥の山々から
ひとしきり水が湧き流れて
千枚の田を潤おした
霞立つころ農鳥が
雪解けの山の肌に現れる
倉石智證


