鍵を掛けたらいいじゃないかと

風が伝えくる

緑の館

錆びた門径はどこへと延びていってるのだらうか

あの奥のさらに奥に

執事が靴先を揃えて垂直に待ってゐる

2021,9,26近藤亜樹「みひかり」

 

慇懃に、さらに慇懃に

もはや好き嫌いを聞いてゐるのではありませんから

それに刻々と時間も

とせかされる

ナイフ、フォークの想ひ出はありません

なにしろ食事はしょっちゅう一人でしたから

だから、窓を開けてとほくに

クジラの時間は海の波頭をとびとびにゆく

わたしはいつも出てゆこうとするのに

なにもかもがおびただしく押しとどめやうとする

なにしろ門からの先の見えない径は

曲がりくねって今では古びた語り草に

 

倉石智證