わたくしの心ではなく
濡れた心臓を前に出すのだ
緑の葉陰に心臓がどっくんどっくんと脈打ってゐる
安堵などではなくむしろ怒りなのかもしれない
それが鳥になって村を越えて飛んで行く
可愛い子供たちよ
おまへたちのためには何でもするよ
身を捩よじり嫌がる蚯蚓を何匹も喰はえては巣に運ぶ
鵯椋鳥よ
蚯蚓の虹色の体液が嘴を汚してゐる
(2022,3,31朝日新聞)
CG・小阪淳「赤色を想像する難しさ」
デデポポーは緑の館に心臓をむきだしにして胸を膨らませる
眸を赤くはらしてなにものかを探す
電線を飛び降りると鋭利な爪が空中で羽を蹴散らかす
空が軋む
片時と云へど心休まるときなど無いのだよ
禽類の喉元を落ちていくころ蚯蚓には
心無く、想ひ出もなく、
なによりも恩寵なのは
すでに痛みさへ無いことなのかもしれない
真っ暗闇に落ちてゆけば
心なんぞは当てにはならない
もっと鋭利な態様と汚れが必要なんだ
わたくしには
食事がすんで真っ白なお皿を片付けるころ
緑の葉翳が幾層にも器物に揺れ
心は上の空に
心臓はびっしょりと汗をかいていた
性器をむきだしにして歩くなんてあいつらの
生まれつきの性癖なのかも知れない
けふも高い塔屋がある
倉石智證
